マイにち×○ざんマイ

漫画やアニメやアイドルや(サブ)カルチャー的なものをムラのある熱意で語るブログ

君の名は。は素敵な映画だけど、ちょっと物足りないと思ってしまった。

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君の名は。は総合点の高い良映画である。

 

もはやいまさら感あるけど、 君の名は。、観ました。飛行機の中ですが。

評判どおり、いい映画でした。独断で良いと思った点を紹介します。

 

① 映像の綺麗さ

まず、映像がハンパなく綺麗。何を差し置いてもまずこれ。

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秒速5センチメートルもちゃんと見ようと思った。

 

② ちゃんとキュンキュンする

高3の男女が、お互いを「何だよ/何よあいつー」みたいにお互いバカにしながら、だんだん惹かれていくっていうのも、微笑ましくてキュンキュンする。

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あーこんな瀧くんみたいなかっこいい男の子と恋愛したかったなあ(笑)女子校出身ゆえに、高校生の恋愛に未だに憧れる。

 

③ 切ないポイントもある

ヒロインのみつはが主人公の瀧くんに会いに何時間もかけて地方から東京まで出て行って、日がな彼を探して、やっと出会えたのに、「誰?」って言われて傷ついたこと。

そして、その夜、なにか悟ったように髪を切り(女の子にとって髪は「命」そのものである)翌日そのまま死んでしまったこと。

そして、みつはが死んだことを、瀧くんが彼女が死んだずっと後で知ったこと。

 

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このすれ違い、切ない。ど典型のありがちなすれ違いですが、どんなありがち設定でも切ないものは切ない。

 

④ 主題にまつわる小ネタも充実

初めの方の古文の授業で先生が説明する、

  黄昏 = たそかれ = 誰そ彼

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まずこの字がうますぎることに驚いたよね(笑)

 

誰そ彼=Who are you?=What is your name?=君の名は。

映画のタイトルそのものです。まずここでおおってなりますね。

 

それから、黄昏のことを、みつはの住む糸守町の方言で「かたわれどき」というとのことです。

そういう方言が実際にあるのか不明です(Wikipediaによると、古語では朝方のことを「彼は誰時」(かはたれとき)というそうです。)が、「かたわれ」「むすび」「糸」「紐」にまつわるセリフや小ネタを各所に見つけられます。

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瀧くんがみつはのおばあちゃんにみつ葉と瀧くんとは実は入れ替わっていたと告白したとき、みつはのおばあちゃんも、おじいちゃんと入れ替わりをしていたのだと言った。

みつ葉と入れ替わった瀧くんに対して、みつはのお父さんがはっとしたように「誰だおまえは。」と言ったとき、ああ、みつはのお父さんもお母さんと昔入れ替わっていて、それを思い出したということのかもしれないなあ、と思いました。

 

3年という時間差の描き方もニクイですね。

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このiPhoneのリアルさよ‥…リアルすぎてアニメの意義を問いたくなる。

 

残る謎は、みつ葉と瀧くんの名前だなあ。これも何か意味があるはず。

 

というわけで、それなりに楽しめたのでした。

 

 

…でも、なんか物足りないのはなんでだ。

 

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でも観終わって、手放しに「超よかった!まじおすすめ!」と言える気がしなかった。

なんか物足りない。その理由をずっと考えていた。

 

そして、ふとオードリー・ヘップバーンの名作「ローマの休日」を観ていて、その理由に気づいた。

 

ハッピーエンドすぎるのだ。

 

 

失い、傷つくことこそ人生を彩り豊かにしてくれるものである。

 

ハッピーエンドすぎる、とはどういうことか。

もちろん、映画なんだから、リアリティを求めているわけではない。あらゆるハッピーエンドを否定しているわけでもない。ちゃんと切ない部分もあることも認める。

 

だけど、、この映画はあまりにも誰も傷ついていない。

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現実では、犠牲が全くないことなんて、ありえない。

なにかを選択することはなにかを切り捨てることだ。その選択が他の選択より良いものであったとしても、選ばなかった他の選択をしていれば得られたなにかを失うはずなのだ。

 

瀧くんはいわば「むすび」のちからで、過去に無理矢理遡り、運命を変えるわけだが、運命を変えて、みつ葉と糸守町の人々を助けた代償に、瀧くんもみつ葉も、入れ替わった記憶をなくしてしまう。ここまではいい。

だけど、その後、2人が偶然に出会って、思い出すのって、あまりにも都合良くないか?

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この画が美しすぎてすべてを赦したくなる。。けど。。

 

いや、もしかしたら詳しいことは思い出さなくて、どこかで会った気がするっていう程度しか思い出さないのかもしれないけど、そうだとしても、主人公が決死の覚悟でがんばって、ヒロインとその大事な人たちを守って、その過程で主人公が失ったものはなにもなくて、そのあとヒロインと運命的に再開して、主人公はヒロインまで手に入れるってさ。あまりにも都合が良すぎる。

 

現実は、そうは甘くない。

思い切ってチャレンジして、成功するとは限らないし、成功したとしても100%大団円なんてことはあり得ない。何かにチャレンジすることはなにかをリスクテイクすることだし、テイクしたリスクは失うことも少なくない。テイクしたつもりのないリスクを予想外に負わされることや、今まで存在して当然だと思っていたものを突然失うことだってある。

そして、何かを失って、永遠に取り戻せないとことに気づいたとき、私たちは深く傷つく。それは、とてもかなしく、とてもつらい。

 

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しかも、私たちは、個人的な感情だけで生きているのではない。生きている以上、家族・親せき・友人を含めた他人や社会に対する責任や、それらからの期待に応える責務を負っている。それはとても煩わしいもので、もっと自由に生きたいと思うことはたびたびある。というか、そんなことばかりだ。だけど、人の中で、社会のなかで生きていて、自分ひとりで生きることができない以上、それらの責任とか立場とかを気にしながら生きなくてはいけない。私たちは常に自分のやりたいことと、他人や社会からのプレッシャーとのはざまでジレンマに悩みながら生きている。そして、時に、社会的な責任や立場のせいで、自分や大切な誰かを犠牲にすることを迫られることも大いにありうるのだ。

 

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でも、逆説的だが、そうやって何かを失い、傷つくたびに、私たちの人生は彩り豊かになっていく。何かを失う悲しみを知っているからこそ、その代わりに手に入れたものの尊さを、価値を、理解することができるようになるからだ。

 

アートとは人の心に爪痕を残すもののことである。

 

先日、宮台真司さんが、ラジオで「アートとは人の心に爪痕を残すもののことである」というようなことを言っていた(正確な言い回しは違うかもしれません。すみません。)。私はそれに非常に共感する。

 

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映画だけじゃない。芸術作品を観て、今まで正体がわからなかった自分の中のもやもやしたものの正体に気づいたり、昔の傷をえぐられたりする。観終わった後もなんだか苦しいし、なんとなくブルーな気持ちになる。アートを鑑賞するのははっきり言って疲れる。

が、他方で、そんな気持ちになることがなんだか心地よくもある。Mなのかもしれない。いや、というよりも、自分の人間味を感じられる気がするのだ。そんな、心を揺さぶることができるモノを創ることができることこそ、アートのすごさなのだと思う。

 

そういう意味では、別にディスるつもりは毛頭ないのだが、君の名は。については、面白かったけど、あまり爪痕は残さなかったなあと。

 

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たとえば、瀧くんのがんばりのおかげで、糸守町の人々の命は助かったが、糸守町自体は破壊されてしまった。糸守町の人々は、代々続く故郷を完全に失ってしまったのだ。経済的な生活基盤も、精神的な拠り所としてのふるさとも。その苦悩は全く映画に出てこない。 とか、そういう話。

 

その意味で、ちょっと物足りないなあと思ったわけです。もうちょっとね、生きていくことの難しさとやるせなさをちょこっと入れてくれるだけでもスパイスが効いてよかったかなあと。

 

ついでなので、ちょっと萎えてしまった点も少し。

人気映画だし、素敵な映画でほぼいうことないとか言いつつ、ついでなので上記のほかにちょっと気になった点を3点ほど。

 

① スポンサー企業の宣伝があからさますぎる

ここかしこにスポンサー企業の製品が登場する。

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アニメに個別ブランドが登場することは普通はほとんどないし、映像が綺麗なだけに非常に目立ちます。個別のブランドが登場するたびにお金の匂いがして現実に引き戻されてテンションがさがった。。

 

 

② やっぱりジブリに比べると浅い。

小ネタが充実しているというのは上記に述べたとおりですが、やっぱり膨大な社会文化的な知識を背景とするジブリ作品に比べるとちょっと浅いなあと。ジブリに匹敵する作品を造るのは本当に難しいと思いますが。

 

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タイトルそのものがかなり序盤で早速出てきてしまうあたり。。。 

 

③ 女子的には、瀧くんにもうちょっと魅力がほしい。

年齢的なものかもしれませんが、もののけ姫や、千と千尋や、ハウルをリアルタイムで観たときには、アシタカ、ハク、ハウルにはもれなく恋しました(笑)

 

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並べると、ハウルのチャラさが際立ちます。

 

瀧くんもかっこいいけど、もうちょっと魅力があったらなあ。奥寺先輩的な、年上女性目線だったら可愛くてちょうどいい感じの男の子なのかもしれませんが。

 

 

と、いろいろ小言を言いましたが、総合的には評価されるべき作品であることに異論はありません。

話題作でもありますので、まだ観ていらっしゃらない方はぜひ!

 

 

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